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2011年4月19日 (火)

角栄政治と中曽根政治、福田政治との差異考その2

 ところが、「ロッキード事件」以来風向きが変わる。角栄が捕縛される度合いに応じて中曽根の台頭が著しくなり、遂には中曽根の方が「田中君云々」なる傲慢不遜な謂いを為すようになった。角栄の生前中は貫目の違いで無理であったが、角栄が政治能力を失うや、こう発言するようになった。角栄全盛時代の史実は、中曽根は角栄の前では子ども扱いされる風見鶏に過ぎなかったと云うのに。

 1980年代前半、鈴木政権の後を受けた中曽根政権の登場により恐ろしいことが始まった。中曽根は日米の反動権力と結託して、「大国的国際責任論」、「戦後の総決算」を標榜しつつ、それまで営々と積み上げてきた世界史上未曽有の奇跡的復興を遂げ、その後の高度経済成長政策も成功裏に推移しつつあった戦後構造の見直しに着手した。

 これにより、角栄の日本列島改造論に基づく諸計画の解体シナリオに手を染めていった。「日本列島改造論」に対することごとくその否定に向った。これが、その後の日本経済失速の要因であると思われる。この解体計画が小泉政治に色濃く継承され、2011年現在は菅政治に引き継がれ今日に至っている。延々30年近くの解体事業のお陰で、今や気息えんえんとする日本に変わり果てている。

 この経緯に対し、今なお角栄を悪く云う者多い。対極的に中曽根が誉めそやされ続けている。こやつら、この歴史観に漬ける薬が欲しいと思う。一体、角栄政治のどこがオカシイと云うのか。れんだいこがことごとく論破して見せよう。一体、中曽根政治のどこがヨロシイと云うのか。れんだいこがことごとく論破して見せよう。

 こたびの福島原発事故により、いつ果てるともしれない危難が日本経済を直撃している。この政策を敷いた中曽根、1970年時点で早くも代替エネルギーをも視野に入れていた角栄。この両者の政治能力をそれとして評価する歴史論が、今ほど望まれていることはない。その起点に助する為にこの一文を捧げる。

 締めくくりとして、「角栄、福田、中曽根の寸評逸話」を確認しておこう。評論家の赤塚行雄氏は、著書「田中角栄の実践心理術」の中で歴代の首相田中角栄、福田赳夫、中曽根康弘の3人を比較する次のような寸評逸話を伝えている。

 「中曽根首相時代、ある自民党福田派の政治家が入院した。この政治家は日頃、角栄に対して批判的言動を繰り返していた。この政治家の入院を聞きつけて真っ先にお見舞いに訪れたのは、角栄だった。『国政のためにも、自民党のためにも、一日も早く治って、戻ってきてくれ』。角栄はそう云うと、ベッドに寝ている政治家の足元にそっと紙袋を差し込んだ。そしてそのまま帰った。中を開けたら紙袋の中に300万円が入っていた。

 次に、派閥のボス福田が見舞いに訪れた。一通りのお見舞いの言葉を述べた後、ぎごちない様子で、白地の封筒を取り出し、『こういう時だ。何かと不自由するだろう。これはほんの心ばかりのものだが』と云って差し出した。しかし、あまりにぎこちない福田の様子に、病人の方が恐縮し、『先生、お気遣いなく。私のことなら大丈夫ですよ』と礼儀として遠慮の言葉を述べたところ、『そうか、それならいいんだが』と、ホッとした様子で封筒を仕舞い込んだ。

 次に、中曽根がやってきた。一応の見舞いの挨拶を述べると、中曽根首相はおもむろに茶色の事務封筒を取り出して、『これ』と差し出した。病人は、福田のときに遠慮して貰い損ねたので、今度はその封筒を掴んだ。ところが、中曽根が、差し出したその封筒をなかなか放さない。お互いに封筒の端を握ったままの状態となった。『この政局の難局にあってはねぇ、君。政治家として心せねばならない要諦は云々』。中曽根はそう云いながらもなお封筒を放さない。封筒の端と端とを握り合ったまま『政治家たるもの、いついかなる時に於いても、初心に戻って己の云々』。遂に、病人の方が根負けして手離した」。

 この逸話は三者の性格を見事に描いている点で面白い。と云うか傑作であろう。これに匹敵するのが戦国武将の織田信長、豊臣秀吉、徳川家康のホトトギス譚であろう。これを確認しておく。江戸時代に松浦静山(まつらせいざん)が随筆集「甲子夜話(かっしやわ)」に書いた言葉とのことである。

 「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」が信長、「鳴かぬなら鳴かせてみせようホトトギス」が秀吉、「鳴かぬなら鳴くまで待とう」が家康。これになぞらえれば、「要らぬでも、まぁ取っておけよ紙袋」が角栄、「そうか要らぬのか、ならば返して貰おう白封筒」が福田、「渡す前、説教づくめのただでは渡さぬ茶封筒」が中曽根ということになろうか。

 2011.04.19日 れんだいこ拝

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

角栄の防衛哲学に関連すると思うのでここへ書かせてください。とおりがけ拝

「地球を破壊する戦争の犬(戦争中毒病の狂犬)」

自分と同じ人間に対して原爆を投下しその効果を観察するという狂った人体実験を行った米国軍産複合体政権。敗戦後彼らに擦り寄って取り入ることで米軍の手先となった売国日本人官僚が、狂気の米軍が中国大陸侵略の前線基地として占領した日本列島の国土の傷ついた同朋をさらに痛めつけ続けてきたのが戦後日本である。

建国以来戦争をやめたことがない「黒船」米軍の狂気こそ地球の人災の極致であり、その確信犯の手先である霞ヶ関こそ日本いや全世界の人災の極限の発生装置である。
全世界人類の平和を取り戻すという、地球そのものを人災から救い出すという大目標を達成するために、日本極悪霞ヶ関を徹底的に解体粉砕しよう。

70年足らずの短い期間に人災の極致である核戦争と原発事故に二つながら襲われた日本の国難からの真の復興は、日本国民自身による地位協定破棄・霞ヶ関解体・最高裁解体の三位一体解体破棄なくしては決して始まらないのである。

投稿: 通りがけ | 2011年4月20日 (水) 07時21分

角栄のコンピューターに匹敵するコンピューターを持つ政治家は今現在ニートの竹原信一君でしょう。建築会社経営者経歴の持ち主ですから、リフォームの設計図も得意でしょうね。
>>http://www5.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=521727&log=201102
etc

投稿: 通りがけ | 2011年4月20日 (水) 20時42分

通りがけさんちわぁ。竹原信一氏の市役所職員給与の全公開は画期的でした。れんだいこが欲しい資料でした。その他のことの細部までは分かりませんが、体制の壁に挑んでいるのは確かです。竹原氏を総務相に抜擢するのなら賛成です。元鳥取県知事の片山は使い者にならん。実は、竹原氏の面貌は、れんだいこの若い時の顔に似ており好感を持っているのです。

投稿: れんだいこ | 2011年4月20日 (水) 21時15分

れんだいこ先生、ありがとうございます。

>竹原氏を総務相に抜擢するのなら賛成です。

ではそのとき首相は誰なのでしょう?

私の考えはこうです。
首相・国家戦略大臣:竹原信一
外相・国家戦略副大臣:小沢一郎
防衛大臣:福島瑞穂
総務大臣:大河原宗平
法務大臣:仙波敏郎
文部大臣:梅原猛
農水大臣:根本良一(福島県矢祭町前町長)
財務大臣:佐藤栄佐久(前福島県知事)
金融大臣:亀井静香
国家公安委員長:鈴木宗男
労働年金大臣:河村たかし
国土交通大臣:橋下大阪府知事
厚生庁長官:河野義之(松本サリン事件被害者警察マスコミ冤罪被害者)
環境大臣:田中康夫
・・・
このあたりを考えております。ご吟味よろしくお願い申し上げます。とおりがけ拝

投稿: 通りがけ | 2011年4月21日 (木) 03時48分

蜘蛛の糸

菅総理福島の被災者たちから怒号で迎えられたようだが、それもこれもみんな自分が国民ではなくアメリカの言うとおりに政治をしてきた因果の報いである。
いまや政治家としてどころか人間としての誇りに至るまでのすべてを失ったに等しい絶体絶命総理に残された道は内閣総辞職だけであろう。
どうせ辞めるなら辞める直前に自分をこれまで使い捨てのバナナ(黄色い皮の白人)ジャップ総理として見下してさんざん虚仮にしてきたアメリカ政府に対して、「ハチの一刺し」地位協定破棄国会決議で一矢を報いてから辞めれば、阿弥陀様の蜘蛛の糸を掴むことができるだろうにね。
この蜘蛛の糸は菅総理だけにしか掴めない。これを掴めばやっと八十八カ所参りが満願結願成就できるでしょう。

これひとつで菅総理は角栄すら出来なかった対米独立を達成した史上最も優れた首相であったというおくり名を手にするでしょう。

投稿: 通りがけ | 2011年4月21日 (木) 18時21分

何かにつけ菅に期待することは止めませう。こ奴は永らく養成されてきたカルト派の中堅幹部であり、よほど脳内奥深くまで洗脳、マインドコントロールされていると読むべきです。ヒラリークリントンの下位に属するのでせう。日本の首相であっても、対等の仕草が許されない。鼻に赤団子ピンポンつけたら似合いそうなピエロそのものではないですか。

投稿: れんだいこ | 2011年4月21日 (木) 19時34分

れんだいこ先生、悪人正機説でございます。衆生本来仏なりとも申します。

それはそれといたしまして、角栄なら絶対にやらない棄民政策が官邸から出されたようですので叩いておきます。ご吟味よろしくお願いいたします。とおりがけ拝

「計画的避難区域」

指定の話を政府が出してきたから、もう一度書いとこう。少し改変して再掲。

「国が何を措いてもまず第一にやらねばならぬ被災者救済国策」

まず政府はすべての震災津波被災者ひとりひとりに現戸籍(被災前から継続)に基づき「東日本震災津波被災者証」を発行せよ。ちょうど広島長崎の被爆者へ「原爆手帳」「被爆者証」を配布したごとく。
こうすれば被災者が日本全国どこへ避難しても戸籍をもとに国からの生活保護医療福祉保護失業保険(失業中全期間支給)を確実に受けることができる。義捐金の配布も「東震津被災者証」に基づいて公平に分配して受けることができる。

震災被災と同時に東電福島原発事故放射能被曝被災から予防的に避難した国民に対しては新たに「被曝避難者証」を前記の「東震津被災者証」と別に支給して、東電・保安院からの補償を受け取れるようにする。

避難区域に指定された地域の国民の戸籍に基づく私権行使と国内外移動の自由を制限することは重大な憲法違反である。

国が被災者対策のうちでまず第一にやらねばならないことが被災者国民の老若男女すべての身分を戸籍に基づいて保証するこの「東震津被災者証」「被曝避難者証」の2つの証明書を速やかに発行給付することである。

この被災戸籍本人証明書発行を老若男女すべての被災者について完遂しなければ、行政府の存在そのものが国民主権を明示した日本国憲法に違反する犯罪者になることをしっかりと弁えて、心して迅速に遅滞無く政府はこれを行え。

投稿: 通りがけ | 2011年4月21日 (木) 20時02分

「東日本震災津波被災者証」の発行は即やるべきことですよね。敢えてやらない理由が分かりにくいのですが、恐らく後ろ盾から止められているのでせう。有効なことはするな。目先騙しのことで時間を費消せよとかの申し合わせがあるのではないでせうか。そんな馬鹿なと云うことになりますが、80年代以降の経済政策的には、こういう発言がありますから分からないですよ。

投稿: れんだいこ | 2011年4月21日 (木) 20時12分

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