« 昭和7年総選挙に際しての犬養首相演説 | トップページ | 陸軍皇道派の有能人士考 »

2011年6月 5日 (日)

5.15事件と2.26事件の相似と差異考

 先に「昭和7年総選挙に際しての犬養首相演説」を確認し、犬養木堂論の一端を述べたが追加しておく。木堂をどう評するべきかは興味深い課題であるように思われる。木堂の素養に注目するのに、「遠祖は吉備津彦命に従った犬飼健命(イヌカイタケルノミコト)」に列なるとある。「5歳の時、父から四書五経の素読を受ける」、「6歳の時、庭瀬藩医森田月瀬に漢学を学ぶ」とある。これによれば、木堂は幼少期に徹底的に日本式学問を仕込まれていたことになる。長ずるに及び西欧学を学ぶが、既に脳格形成されていた日本式学問の上に西欧学を吸収したのであって、その他大勢のインテリの如くの「身も心も西欧被れ」にはならなかったことを意味している。

 犬養家は幕末まで地主階層の家柄であった。そういう意味で、木堂の学問形成の仕方は、旧地主階級の明治維新以来の文明開花の受容の仕方に於ける標準を示しているのではなかろうか。どこの馬の骨か分からぬ者の近代化被れではなく、正式に日本式素養教育を受けた側の者の近代化被れであった点が興味深い。

 木堂は、日本の在地土着系頭脳と精神が西欧政治理論を取り入れ調和させた人物と云うことになる。青年期を経てジャーナリストになり、その後政治家に転身するが、「日本的素養を身につけつつ西欧学を咀嚼した稀有の政治家」足り得ていた格好の教材人物と評し得るのではあるまいか。木堂の政治家としての史的価値は、他の凡庸なインテリ、政治家と違って、西欧政治理論を学びながら取り込まれず、あくまでも日本系政治家としての感性と能力で明治維新後の日本のあるべき姿を求めて牽引しようとしていた点にあり、この点がもっと高く評価されても良いと思われる。こらっ菅派よ聞いとるか。お前らの真反対の政治の先達を評しているんだ、神妙に耳を傾けよ。

 木堂は長い政界遊泳の果てに遅咲きの76歳にして首相になり、5.15事件で凶刃に倒れたが、このことそのものが木堂が有益な政治家足り得ていたことを証しているのではなかろうか。歴代首相史に於いて、襲撃、暗殺、変死、疑獄に巻き込まれた者ほど有能だったのであり、名宰相と持て囃された者にロクな者がいないことが透けて見えてくる。

 革命家に例えれば、畳の上で往生した革命家ほど嘘っぽいのと同じである。生存中に名宰相と評され、後世の史家からも同様に評されているのは戦後では吉田茂ぐらいのものではなかろうか。その他はニセモノばかりである。してみれば、木堂は戦前の在地土着派系有能政治家であったが故に葬られたのではなかろうか。この構図は、田中角栄のロッキード事件にも当て嵌まろう。こういう史観が欲しいと思う。

 
さて、ここでは、「5.15事件と2.26事件の相似と差異」を確認しておく。5.15事件も2.26事件も、時の軍部の暴走によるクーデター事件として同じ土俵で評されているが、その質は大きく違うのではなかろうか。2.26事件反乱軍の意識に於いては「5.15事件に続け」なるものがあったかも知れないが、それは意識止まりの話であり、歴史的役割は百八十度異なる。

 5.15事件は、檄文では2.26事件の決起文と同じような愛国至情を述べているが、結果的に当時の国際金融資本勢力が一部の軍部や民間人の軽薄分子を唆(そそのか)して、当時稀有なる在地土着系政治家の有能者を葬ったのであり、2.26事件は逆に、国際金融資本に籠絡されていない在地土着系の一部軍部が、国際金融資本勢力が牛耳る時の社会体制に叛旗を翻したと云うのが実相ではなかろうか。

 2.26事件反乱将校たちの背景には皇道派と統制派の確執が伏在していたが、もっと大きく見ればそういうことになるのではなかろうか。とすれば、5.15事件と2.26事件は真反対の性格を持つ事件だったと云うことになる。一部の軍部の犯行と云う点では共通しているが、それは表面的な一致であり、内実は打倒対象とするものが真反対だったのではなかろうか。かく視座を据えたい。

 それ故に、5.15事件と2.26事件では反乱者の処罰が雲泥の差になる。5.15事件の犯人たちの最高刑は無期懲役で僅かに橘孝三郎一人、後は禁固刑であり、しかも数年後に全員が恩赦で釈放され、満州や中国北部で枢要な地位についている。これに比して、2.26事件の犯人たちには苛酷な処分が待ち受け、「自決2名、謀者17名死刑、69名有罪」となっている。
この比較は別サイトで確認することにするが、この違いを説明するのに、他の理由が考えられるだろうか。

 歴史は、その後の勝者の史観で語られるのを常とする。第二次世界大戦の勝者は国際金融資本帝国主義派であった。故に、国際金融資本帝国主義派の都合に良い歴史が捏造され語られることになる。5.15事件の真相を隠す為に、5.15事件を2.26事件と極力同じレベルで吹聴し「単なる軍部の暴走事件」と評することになる。2.26事件然りで、反乱軍が見据えていたのは国際金融資本帝国主義派の日本溶解であり、これを拒否せんが為の決起であった、と云う点が隠蔽される。

 歴史の真相はこうである。犬養首相は、ジャーナリスト時代からの「東亜の平和」を唱える大アジア主義者、アジア同胞主義者であり、宮崎滔天、頭山満らの国士系在野右翼政治家と気脈通じて明日のアジアを支える逸材足る中国の孫文、蒋介石、インドのガンジー、ネルー、ラス・ビハリ・ボースらを日本に亡命させ、面倒を見た経歴を持つ。次代のアジアを担う人材を庇護しネットワークを形成していたことになる。

 そういう犬養首相の政治能力に於いて、日支連帯の絆の呼びかけによる満州事変解決は有り得た可能性があり、それ故にそうはさせじとする国際金融資本帝国主義派が裏で糸を引いて犬養首相を刺殺せしめた。こう捉えるべきではなかろうか。5.15事件以降、日本は国際金融資本帝国主義派に手玉にとられること露骨になり、満州事変が拡大し日中戦争の泥沼に踏み込み、遂に大東亜戦争への突入を余儀なくされることになった。

 2.26事件とは、この流れに掉さした有能軍人たちによる反乱だったのではなかろうか。皇道派が仕掛けたが、「昭和維新断行、尊皇討奸」の雄叫びは、天皇親政を標榜すると云う限界を持っていたが、真に企図していたのは「国体擁護」の方であり、その意図するところは国際金融資本に籠絡された「元老、重臣、軍閥、財閥、官僚、政党」に支配される政治からの転換即ち「明治維新の反転による昭和維新」だったのではなかろうか。2.26事件を評する視座をこのように据えなければならないのではなかろうか。

 結果的に日本は完膚なきままに叩き潰され敗戦を余儀なくされた。既に軍部内に国際金融派のエージェント網が構築されており、彼らのアジェンダに基づいて操作されていた。特に海軍が酷かった。陸軍は在地系と籠絡系、中間派が三対立していた。軍部内にかくもエージェント網が張り廻らされていたなら勝てる戦も勝てまい。そういう眼で見れば、日米開戦の火ぶたとなった真珠湾攻撃そのものからして情報が筒抜けだった形跡が認められる。その他重要戦史ではことごとく負けるように誘導されている気配が認められる。

 ちなみに、戦後の極東国際司法裁判所で断罪されたA級戦犯とは軍部内の非エージェント派であったと逆に証される。A級戦犯を極悪非道人と評すれば評するほど反戦平和主義者であるかのように論ぜられることが多いが、A級戦犯論はこの視座からも捉えられるべきではなかろうか。その他問いたいことは多々あるが割愛する。本稿で「5.15事件と2.26事件の相似と差異」が確かめられれば本望である。

|

« 昭和7年総選挙に際しての犬養首相演説 | トップページ | 陸軍皇道派の有能人士考 »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

☆★☆ テレビでも紹介された安心&信頼の買取サイトです! ☆★☆
皆さんの押入れに眠っている、ガン消し、キン消し、ビックリマンなどのシール類、
カードダス、プロ野球カードなどのトレカ、フィギュア等々を高値で買取させて頂けませんでしょうか?
(おもちゃ類であれば何でも買取しておりますので、是非お問い合わせ下さい!)
ショップではなく、完全に個人収集を目的としており、商売目的ではない買取の為、
買取価格は普通の買取サイト、リサイクルショップなどの約3倍程度で買取させて頂きます。
(もちろん査定は無料です!)
持っていてもしょうがない、でも捨てるのは勿体ないと思っている方、
詳しくはHPが御座いますので、是非お越し下さい♪
→  ttp://kaitoricollector.com/

投稿: 買取コレクター | 2011年6月 7日 (火) 13時50分

☆★☆ テレビでも紹介された安心&信頼の買取サイトです! ☆★☆
皆さんの押入れに眠っている、チョロQ、美少女フィギュア、ねんどろいど、
ウルトラマン系ソフビ人形、その他様々なフィギュア等々を高値で買取させて頂けませんでしょうか?
(おもちゃ類であれば何でも買取しておりますので、是非お問い合わせ下さい!)
ショップではなく、完全に個人収集を目的としており、商売目的ではない買取の為、
買取価格は普通の買取サイト、リサイクルショップなどの約3倍程度で買取させて頂きます。
(もちろん査定は無料です!)
持っていてもしょうがない、でも捨てるのは勿体ないと思っている方、
詳しくはHPが御座いますので、是非お越し下さい♪
→  ttp://kaitoricollector.com/

投稿: 買取コレクター | 2011年6月 7日 (火) 13時52分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1453913/40275410

この記事へのトラックバック一覧です: 5.15事件と2.26事件の相似と差異考:

« 昭和7年総選挙に際しての犬養首相演説 | トップページ | 陸軍皇道派の有能人士考 »