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2011年7月 2日 (土)

「日本改造法案大綱」各論考その7、児童保護政策、社会的弱者政策考

 「大綱」は、児童の保護と義務教育制、男女平等教育政策を打ち出している。児童の保護位置づけについて「児童の権利として児童そのものを権利主体とせるは、父母の如何に拘わらず、第二の国民たる点に於いて国民的人権を有するをもってなり」、「児童の権利は自ずから同時に母性保護となる」と弁じている。

 児童の保護政策として「幼年労働の禁止」を掲げている。曰く「満16歳以下の幼年労働を禁止す。これに違反して雇傭したる者は重大なる罰金又は体刑に処す。尊族保護の下に尊族に於いて労働する者はこの限りにあらず」としている。その理由の一つとして「実に国家の生産的利益の方面より見るも幼童にして残賊するものよりもその天賦を完全に啓発すべき教育を施したる後の労働が幾百倍の利益なるは論なし」と弁じている。これが北理論の白眉の第23政策である。戦後憲法第27条「労働の権利・義務、労働条件の基準、児童酷使の禁止」がハーモニーしている。

 国民教育の権利として「10年間義務教育、学費、昼食無料制」を打ち出し次のように記している。概要「国民教育の期間を、満6歳より満16歳までの10ケ年間とし、男女を同一に教育す。満15歳未満の児童は一律に国家の養育及び教育を受くべし。国家はその費用を児童の保護者を経て給付す。学制を根本的に改革して、十年間を一貫せしめ、日本精華に基づく世界的常識を養成し、国民個々の心身を充実具足せしめて、各々その天賦を発揮し得べき基本を作る。無月謝、教科書給付、昼食の学校支弁を方針とす。男生徒に無用なる服装の画一を強制せず。校舎はその前期を各町村に存する小学校舎とし、後期を高等小学校舎とし、一切物質的設備に浪費せず」。

 これが北理論の白眉の第24政策である。戦後憲法体系では9年間義務教育制にしているが、教科書有料、昼食有料制である。早く北理論を適用すれば良かろう。戦後憲法第26条「教育を受ける権利、教育の義務、義務教育の無償」がハーモニーしている。

 体育についてもユニークな弁を展開している。「丹田の鍛冶」を心がけるべきとしている。その理由として、「単に手足を動かし器具に依頼し散歩遠足をもって肉体の強健を求むる直訳的体育は実に根本を忘れて枝葉に走りたる彼らの悪摸倣なり。特に女子をして優美繊麗のままに発達したる強健を得せしむるには丹田の根本を整うる以外一の途なし」。これが北理論の白眉の第25政策である。「丹田の鍛冶」につきどのようなものか分からないが、恐らくかなり有益な提言ではなかろうかと思われる。

 「児童の自由遊戯論」を展開して次のように述べている。「男女の遊戯は撃剣・柔道・大弓・薙刀・鎖鎌等を個人的又は団体的に興味づけたるものとし、従来の機械的直訳的運動及び兵式訓練を廃止すべし。変性男子の如き醜き手足を作りてしかも健康の根本を培わざる直訳体操は特に厳禁を要す。兵式体操を廃止する所以は、その形式また実に丹田の充実を忘れたる外形的整頓に促われたるものによるも一理由なり。兵役に於いてすべきことは全て兵営に於いてすべし。国民教育の要は根本の具足充実にあり。単純なる遊戯として男子が撃剣柔道に遊び女子が長刀鎖鎌を戯るるはその興味に於いてべースボール、フートボール等と雲泥の相違あり。精神的価値等を挙げて遊戯の本旨を傷くべからず。これは生徒の自由に一任すべし。現今の武器の前に立ちてこれらに尚武的価値を求むるに及ばず」。

 即ち、軍事教練式体育に反対し、子供は子供の感性で自由に好きな技芸、スポーツに取り組み、伸び伸びさせるが良いとしていることになる。これが北理論の白眉の第26政策である。

 「基礎教育有益論」を次のように述べている。「男女共中学程度終業をもって国民たる常道常識を教育せらるるもの。ようやく文字を解し得るか得ざるかの小学程度をもって国民教育の終了とするは国民個々の不具と国家の薄弱を来すものなり。これ教育すべき国家の窮乏せると、教育せらるべき国民に余裕なかりしをもってなり。一貫したる十年間の教育は、その終了と同時に完全具足したる男女たるべく、さらにその基本をもって各々その使命的啓発に向って進むを得べし」。即ち、義務教育で基礎をきっちりと教え、その後は独学でも歩めるようにするのが肝要なりとしていることになる。これが北理論の白眉の第27政策である。

 「男女平等教育政策」を次のように述べている。「女子を男子と同に一教育する所以は、国民教育が常識教育にしてある分科的専攻を許すべき齢にあらざると共に、満十六歳までの女子は男子と差別すべき必要も理由もなきをもってなり。従って女学校特有の形式的課目女礼式、茶湯、生花の如きまた女子の専科とせる裁縫、料理、育児等の特殊課目は全然廃止すべきものとなる。前者を強制するは無用にして有害なり。後者は各家庭に於いて父母の助手として自ら修得すべし。女子に礼式作法が必須課目ならば男子にも男子のそれがしかるべく、茶の湯、生花が然るならば男子に謡曲を課せざれば不可。車夫の娘にビフテキの焼方を教授し外交官の妹に袴の裁方を説明し、月経なき少女に育児を講義する如き、今の女子教育の全ては乱暴愚劣真に百鬼夜行の態なり。学校は全てにあらず。各人の欲するところに随い各家の生活事情に応じて学ぶべき幾多のものを有す」。

 即ち、子供を早くより余りに型に嵌めてはいけない、成長に応じて相応しい礼儀作法を与え習得させるのがよろしいと諭していることになる。これが北理論の白眉の第28政策である。

 「十年一貫の国民教育の必要」を次のように弁じている。「社会主義者のある者の如く一切の犯罪なき理想郷を改造後の翌日より期待するは空想なり。もとより現今の政治的経済的組織より生ずる犯罪の大多数は直ちに跡を絶つべきは論なし。国家の改造とはその物質的生活の外包的部分なり。終局は国民精神の神的革命ならざるべからず。十年一貫の国民教育が改造の根本的内容的部分なり」。即ち、義務教育を重視して子供の能力、人格をしっかり磨くことが理想社会の第一歩であるとしていることになる。これが北理論の白眉の第29政策である。

 「国家扶養の義務」の項で、貧民保護、不具廃病者援助政策も打ち出している。「貧困にして実男子また養男子なき六十歳以上の男女、及び父又は男子なくして貧困且つ労働に堪えざる不具廃疾は国家これが扶養の義務を負う」、「兵役義務の為に不具廃疾となれる者の国家扶養の義務は別に法律をもってその扶養を完うすべし」。「不具廃疾者をその兄弟遠族又は慈善家の冷遇に委するは不幸なる者に虐待を加うると同じ。その母又は女子に負荷せしめざる所以は、愛情ありといえども扶養能力なきが故に、結局その兄弟又は娘の夫の負担となりて、立法の精神を殺すものとなるをもってなり」。

 この辺りは、戦後憲法25条の最低限文化的生活生存権規定の先取りをしているのではなかろうかと思われる。これが北理論の白眉の第30政策である。してみれば、北理論はかなりな程度に於いて戦後憲法に採用され今も生きていることが分かり興味深い。

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