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2011年8月22日 (月)

神武東征、神武の橿原宮即位譚その3

 河内国の難波津に到着した天孫族は、ニギハヤヒの命率いる国津族出雲系王朝軍と闘うことになった。難波の日下でナガスネ彦軍と闘い敗れる。その時の様子が次のように記されている。

 「難波の日下で、天孫軍は、国津系の豪族ナガスネ彦軍と闘い、長兄のヒコイツセ(五瀬)の命が敵の放った矢に射抜かれて負傷するなど手痛く敗れた。天孫軍は南海道に兵を募り再び戦闘するも、弟のヒコイナイ(稲飯)の命が討ちとられた。第三皇子なるミケイリノ(三毛入野)の命は行方不明となった。第四皇子のワケミケヌの命が統率し、南海道、韓兵、淡路等の兵合わせて再度攻略する。今度はナガスネ彦が重傷を負い、東国に退く。アビ彦は越に退く。天孫族は、四男のワケミケヌの命の指揮に入ることよって辛うじて初勝利することができた」。

 これを仮に「天孫族と国津族の激戦譚」と命名する。ここで、天孫族と国津族の戦いが凄まじく、天孫族は摂津で重大な敗北を喫したことを伝えている。この時の戦いで、長兄のヒコイツセの命が負傷、弟のヒコイナイの命が戦死、第三皇子なるワケミケヌの命は行方不明となった。

 第四皇子なるワケミケヌの命が天孫族を率いて、紀州熊野に上陸する。この時、長兄のヒコイツセの命が没した。その時の様子が次のように記されている。

 「長兄のヒコイツセの命の『日の神の御子が日に向って戦うのが良くない。今よりは行き廻りて日を背に負うようにして戦うことにせよ』の言に従い、天孫軍一行は撤兵した。ナガスネ彦軍は、これを追わなかった。天孫軍は南へ下り茅渟(ちぬ=和泉の海)の山城水門に着いた。続いて、紀の国の男の水門に上陸した。そこで、長兄のヒコイツセの命が『賎しい奴に手傷を負わされて死んでしまうのか』と口惜しがりながら死んだ。

 さらに南下して、名草邑に着き、ナクサトベ(名草戸畔)と名乗る女賊を討伐した。一行は熊野村の浜に舟を着け、そこでニシキトベ(丹敷戸畔)という女賊を誅(ちゅう)した。その後、徒歩で北に向かった。道中、大きなクマが現れたかと思うと姿を消した。佐野を越えて熊野の神邑(みわのむら)に辿り着いた。この時、大熊が現われてすぐに消えた。ワケミケヌの命は俄かに病に襲われ、軍人達も倒れて臥してしまった」。

 これを仮に「天孫族の紀州熊野迂回上陸譚」と命名する。天孫族の東征が苦心惨憺たるものであったことが知らされている。しかしこれを逆に窺うと、国津族が如何に結束し強靭であったかが分かる。皇国史観は、国津族の強靭さを邪、天孫族の悲劇を是として組み立てているが、国津族には迷惑な話でしかなかろう。

 天孫族が疲弊困憊していた時、熊野のタカクラジ(高倉下)が、タケミカヅチが出雲王朝を平定した時の太刀を献上して来る。次のように記されている。

 「天孫軍が絶望の淵に追いやられていたこの時、熊野のタカクラジが、一振りの太刀を持ってやって来て奉った。曰く、アマテラスとタカギの神が夢に現れ、タケミカヅチに『葦原中つ国はまだ騒がしい。お前が行って平げなさい』と、苦戦する天孫軍支援を命じた。タケミカヅチは、『私が行く代わりに先に私が葦原の中つ国を平定した時のフツノ御魂の太刀を天降りさせ、タカクラジの倉の屋根に穴を開け、そこから落とし入れてくだされば良いでせう。国は平ぎましょう』と答えた。

 続いて、『タカクラジよ、私の剣は名をフツノミタマという。あなたの倉の中に置こう。その太刀を天つ神の御子に差し上げるように』と仰せられた。タカクラジの目が覚めた。夢のままに庫を開けると、はたして剣が庫の底板に逆さに突き刺っていた。その太刀を差し上げに参りました。(この太刀はミカフツ神又はフツノミタマと云い、その後石上神宮に納められている) タカクラジの言を聞いたワケミケヌの命は忽ち精気を取り戻した」。

 これを仮に「タカラクジ(高倉下)帰順譚」と命名する。この神話は、タカクラジ一族が最も早く天孫族に帰順したことを隠喩していよう。タカクラジ一族とは何者か、はっきりしない。

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