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2011年11月26日 (土)

【1972.10.30日、衆議院における日本社会党・成田知巳の質問に対する田中首相答弁】

成田君の質問に対してお答えを致します。

 まず第一は、日中国交正常化についてでございます。多年にわたり日中関係の改善、両国交流の促進に努力をしてこられた多くの方々に、衷心から敬意を表します。日中国交正常化の実現は、機が熟した結果、両国が合意に達したものと考えておるのでございます。

 第二は、これからの日本の外交はいかにあるべきか、日米安保条約の極東条項、日米共同声明の台湾条項は削除すべきではないかという趣旨の御発言でございますが、世界的に見ても、緊張緩和の傾向が見られますが、アジア全域を見るとき、不安定な要素が残されていることも否定できません。我が国は、平和と独立を守る為に必要な防衛力を整備しなければなりません。(拍手) 米国との安全保障体制は堅持することによって、我が国の安全確保に万全を期す必要があります。(拍手) 我が国の安全は、極東の平和と安全なくして維持し得ないものであって、政府としては、日米安全保障条約の極東条項は、我が国安全確保の為に必要と考えており、これを削除するつもりはありません。(拍手) なお、1969年の日米共同声明のいわゆる台湾条項は、当時の日米首脳の認識が述べられたものでありますが、台湾を廻る情勢は、その後質的な変化を遂げており、これが現実に意味を持つような事態は起らないと考えておるのであります。

 第三は、車両制限等の改正とB52の沖縄大量飛来等、ベトナム戦争についてのことでございますが、政府はベトナム戦争の平和的解決ができますように希望しておるのでございます。近時南北問題が円満な解決の方向に向かっているよう報道せられておることは喜ばしいことでございます。米軍車両の問題につき申し上げますが、8月上旬に米軍車両の通行問題が生じましてから、政府は法令の範囲内で円満に自体の解決が図れるよう、あらゆる努力をして参ったのでございます。しかしながら、通行許可の権限を持つ道路管理者が、道路の管理、保全とは関係のない理由をもって米軍関係の輸送許可を留保するなど、法令の適正な運用が阻害されるような状態が続いたのであります。我が国は、条約上米軍に対して国内における移動の権利を認めており、このような条約上の責任を果たす為に車両制限令を改正せざるを得なかったのであります。(拍手)

  また、B52の沖縄飛来につきましては、条約上我が国はこれを拒否できません。がしかし、国民感情に鑑み、政府として台風避難など真にやむを得ない場合以外は飛来させないよう求めており、米側もこれに応じているのであります。今回の飛来も、台風の接近により止むを得ない措置であり、天候の回復によりその全部がグアム島に戻ったことはご承知の通りであります。(拍手)

 第四問は、四次防は防衛白書に基づいてつくられたものである。政府は、いまなお中国、朝鮮などを強硬外交だと考えておるかどうか、こういうお話でございますが、四次防は、我が国の自衛の為に必要最小限度の防衛力を整備することを目的として決定したものでございまして、去る45年の防衛白書発表当時の情勢に基づいて立案したものではございません。また、ご指摘の中華人民共和国及び朝鮮民主主義人民共和国は、日中外交の正常化や米中の接近並びに朝鮮半島における南北間の対話の開始等に見られますように、事態を平和裏に解決しようとする努力を示しておるものと考えられるのでございます。

 政府は防衛力の限界をどこに置くのかという問題でございますが、四次防は、我が国が自衛の為に必要とする最小限度の防衛力を漸進的に整備するため策定したものであり、防衛力の限界を定めなければ計画の立案ができない性質のものとは考えておりません。しかしながら、我が国の防衛力の規模が、国際情勢、国力、国情に応じ、今後ともどの程度のものを適正とするかを見極める必要がありますので、おおよその整備目標を検討するよう防衛庁に指示をしておるのでございます。

 他方、このたび決定された主要項目の整備において示される5カ年間の防衛費の総額は、一応4兆6千3百億円と見込まれておりますが、これがGNPに占める比率は、経済成長率との対比において、ほぼ現状横ばい程度に推移するものと見込まれ、長期的に見て、今後の経済運営支障となることはないと考えておるのであります。

 四次防、日米安全保障条約の廃棄、日ソ平和条約の締結、日本と中ソ朝との友好不可侵条約の締結等々に対して言及がございました。我が国の防衛力は、自衛のため必要とする最小なものに限られており、かかる四次防において他国を攻撃するような防衛力が計画されていないことは、その内容をご覧いただければ明らかでございます。また、我が国が今後とも平和と安全を享受していく為には、日米安保体制を堅持することが不可欠であると考えておるのでございます。(拍手) 

 日本の防衛費が大きいかどうかと云う問題を例を挙げて申し上げます。防衛と云うものは、よその国の防衛なのではないのであります。自分を含めた国民全体の生命と財産をどう守るかというのであります。(拍手) まず、その防衛体制が妥当であるのかどうかという問題を考えるには、世界の国と比較することも一つの案であります。諸外国との国防費について見ますと、米ソ等の超大国はさておき、西ドイツ、英国、フランスの国防費は、年間2兆円であります。四次防の規模5年間の合計は、西ドイツの1972年の国防費2兆3千億円の丁度半分に過ぎないのであります。GNPとの対比につきましても、これら諸国の国防費は、GNPの3ないし5%を占めております。中立国スウェーデンにおいても約4%なのであります。スイスは約2%であります。(拍手) 国民一人当たりの国防費につきましても、西ドイツ、英、仏にありましては年間4万円に近く、我が国の一人当たり約8千円は、その5分の1でございます。(拍手) 中立国スウェーデンは約5万7千円であって、我が国の7倍。スイスも約2万7千円で、我が国の3.5倍の防衛費を負担しておるのであります。(拍手)

 このように、各国はそれぞれ自国の防衛の為に努力を払っておることを知らなければなりません。(拍手) その意味から考えてみましても、我が国においても、この程度の負担をするのは止むを得ないことだと思うのでございます。(拍手) 非武装中立論を前提にして国防論や防衛論をする方々との間には意見の相違があることは止むをえませんが、しかし、国防や防衛と云う問題をそのような観念論によって律することはできないのであります。(拍手)

 なお、ご発言がございました日中ソ朝友好不可侵条約の御構想については、その内容を十分承知する前に意見を申し述べることは差し控えますが、それが直ちに日米安全保障条約の廃棄、四次防の中止あるいは自衛隊の削減に結び付くものとの考えをとる必要はないと思います。なお、政府が、日ソ平和条約の締結について各般の努力を重ねていることは、グロムイコ外相の来日、大平外務大臣の訪ソを見ても明らかなことでございますので、ご了承賜りたいと存じます。

 なお、ここで一言申し上げておきますが、周囲の情勢が変わってきたからといって、日米安全保障条約を廃棄しなければならないというような端的な議論には与しないのでございます。(拍手) それは、東西両ドイツの間に雪解けの状態があり、独ソ条約が締結せられる現状においても、NATО締約国の国々は、この条約を廃棄しようとはしておられないではありませんか。(拍手) 自らの見識において、自らの責任において、どうして自らを守るかと云うことについては、数字に立って、現実を直視して、後代の為にも誤りのないように努力をすべきであると思います。(拍手)

 これから経済運営について申し上げます。

 一人当たりの国民所得は、ほぼ西欧水準に達しました。しかし反面、公害、住宅、社会保障等の問題が生じて参りました。政府は従来の生産、輸出の経済運営を改め、成長の成果を活用し、国民福祉の充実をはかるような方向に政策の方針を転換して参ります。私の提唱した日本列島改造案も、こうした国民福祉充実の為の基礎条件を整備することを目的と致しておるのでございます。

 公害と生産の調整について申し上げます。住民の生活環境を破壊せず、自然を注意深く保全しながら、地域開発を進めなければなりません。志布湾等の大規模工業基地の開発に当たっては、我が国の国土利用の在り方、その地域の生活水準の向上と並んで、環境の保全が最も大きな問題であります。従って、その開発が環境に及ぼす影響を科学的なデータに基づいて十分チェックし、環境保全について十分な調整のうえ、しか地元住民の理解と協力のもとにその方向を決定すべきものであります。発生源からの汚染物質の排出等の規制については、これを一層強化して参りますが、一歩進めて総量規制など、適切かつ合理的な規制方式を検討して参りたいと存じます。

 汚染の原因者が公害防止費用を負担すべきであるという考え方につきましては、我が国の制度は既にそのような考え方によっておるところでございます。企業が汚染者負担の原則を貫き、公害防止に万全を尽くさなければならないことは当然でございます。その上で、政府、地方公共団体も公害問題の早急な解決の為に最善の施策を講じなければなりません。公害訴訟における因果関係の立証につきましても、実際上なかなか困難な問題がございます。最近の判例では、因果関係の認定について緩やかな方向が出ておりますが、因果関係の推定については、このような判例の方向を見守りつつ、その法制化については、引き続き検討して参りたいと存じます。

 公害に対する立ち入り検査権の問題でございますが、現行の公害規制法において、工場等に対する立ち入り調査権は都道府県知事が行うことになっておるのでございます。政府としては、都道府県知事などが立ち入り検査を適切に行うことにより、地域住民の期待にこたえるよう、十分指導して参りたいと存じます。

 第九は、工業用地と農用地の問題でございますが、農業は国民の食糧を確保するとともに、国土を保全し、国民の生活環境を維持していくのに重要な役割を果たしておることはご承知の通りでございます。従って、優良な農用地を十分確保すべきであり、また、工業用地の確保に当たっては、合理的な土地利用を計画的に行うことにより、十分農用地との調整を図って参るつもりでございます。

 老人医療無料化等についての御発言について申し上げます。

 老人医療無料化等につきましては、70歳以上の者を対象として48年1月から実施をするものでございますが、年齢を65歳まで引き下げることについては、今後の実施状況を見たうえで考えたいと思っておるのでございます。乳幼児等の医療無料化につきましては、現在、未熟児など、保健上特に必要なものを対象として公費負担を行っておりますが、これを乳幼児の疾病一般にまで拡大をすることにつきましては、今後慎重に検討して参ります。

 年金について申し上げます。

 先般公にされた関係審議会の意見を考慮して、年金額について大幅な引き上げを行うとともに、物価上昇等の経済変動に対応して年金額を調整し得る措置を講ずる等、年金制度の整備充実を図って参りたいと考えます。年金の財政方式を直ちに賦課方式に移行してはどうかという問題でございますが、当面は現行の修正積み立て方式を、実情に即した配慮を加えながら維持していくことが適当ではないかと考えられるのでございます。年金積み立て金の運用のうち、加入者の福祉増進に直接寄与する分野に充てられる還元融資につきましては、明年度からその融資枠を、積立金の4分の1から3分の1に拡大する方針でございます。

 物価の問題について申し上げます。

 物価の安定は、国民生活の向上と安定の為に基本的課題でございます。しかし、国土の1%の地域に3千2百万人の人口が集中しておるという事実を前提にする限り、物価問題の根本的な解決は困難なのであります。従って、日本列島改造政策を根幹に据えつつ、低生産部門の構造改善、流通機構の近代化、輸入の促進、競争条件の整備などの施策を進めて参ることにより、物価安定に寄与して参りたいと考えます。(拍手)

 地価安定政策に対して答弁申し上げます。

 一定規模以上の土地の取得について何らかの規制措置については、民間の取引件数、取引態様等を勘案して、最も適切かつ効率的に土地取引を規制する措置を検討して参りたいと考えます。税制上の措置によってのみ土地需給の不均衡を図ることは、自ずから限界がございますが、法人の所有する土地について何らかの税制上の措置を講ずべきかどうかについても検討を続けます。現行の地代家賃統制令を全ての土地について適用することは、必要な貸し地の供給を阻害し、住宅の供給を抑制する恐れがありますので、適切な手段とは考えられません。むしろ、公的住宅の大量建設とともに、低利融資、税制上の措置等により民間住宅の供給を促進することにより、需給関係の緩和を通じて地代、家賃の適正化を図っていくべきものと考えられるのでございます。

 人間を尊重する政治に流れを変えること、この御説に対して申し上げます。

 私の日本列島改造の狙いとするところは、福祉が成長を生み、成長が福祉を約束すると云う、成長活用の経済環境のもとで過密と過疎の同時解消、公害の追放、物価の安定などをダイナミックに進めて、国民が安心して暮らせる、住みよい、豊かな日本をつくることにございます。具体的な処方箋につきましては、国民各位の理解と支持を得ながら、決断し、実行して参ります。(拍手)

 公害法改正問題がございましたが、公害法問題に関しましては、公労法制定以来24年を経過を致しております。内外情勢も法制定当時から大きく変化を致しておりますので、公務員制度審議会に於いて、諮問に対する速やかな結論が出せることを期待しておるのが現状でございます。

 最後に、政治資金規正法につきまして申し上げます。

 政党政治の象徴、我が国の議会制民主主義の将来に関わる重大問題でありますが、幾たびか改正法案が国会に提案をされ、廃案になった経緯があることは、周知の通りでございます。これを今日の時点に於いて見ると、金のかかる選挙制度あるいは政党の在り方をそのままにして具体化するということにいろいろと無理があることを示しているように思いますが、工夫によっては、その方法も見出し得るものと考えられるのでございます。特に、現在、政党本位の、金のかからない選挙制度について選挙制度審議会で鋭意審議している時でもございますので、このような情勢を踏まえ、徹底した検討と論議を積み重ねて参りたいと考えるのでございます。以上。(拍手)

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