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2011年12月 8日 (木)

1972.10.30日、衆議院における自由民主党・桜内義雄の質問に対する田中首相答弁

 桜内君にお答えいたします。

 まず第一は、日米経済関係の真の姿を理解する為、日米関係の改善に一層努力をする必要があるという御指摘でございますが、まさにその通りでございます。戦後四半世紀の状態を見るまでもなく、日本の安全は、日米安全保障条約という重要な協定によって確保されておるのでございますし、日本の戦後の経済復興は、ご指摘の通りのような経緯を経て今日の繁栄を迎えておるのでございます。特に貿易は、輸出入とも30%のシェアを占めるという重要な状態でございますので、日米間については、常に十分なる理解と意思の疎通を図っていかなければならないと思います。そう云う意味で、前回のハワイ会談の際、私は、日米両国の間に間断なき対話の必要性を強調して参った訳でございます。

 なお第二は、日米安保体制は日本だけの問題ではなく、自由諸国家にも深い関係があり、一部反安保の批判的行動があることは遺憾であると云うことでございますが、誠にその通りでございます。安全保障条約というものは、誰を守るのでもなく、お互いを含めた日本の安全保障の為に存在をするのでございます。でございますので、これが必要性と云うものは、常に国民皆さんの中で理解を求められなければならないことは当然でございますが、しかし、日本の安全は、ただ日本だけの状態で確保できない。極東の、アジアの、世界の平和の中に大きな関連があることを十分理解をしなければならない、こう思うのでございます。

 でありますので、先ほど私は成田君に答弁を申し上げたように、質問があったからその部分に対してだけお答えをするというのではなく、そんなに異論があるにも拘わらず、自由民主党も内閣も現安保体制を守っていかなければならぬというには、それなりの理由があるからであります。そういう理由を十分国民各層にご理解を賜るということでなければならない、こう思うのであります。(拍手)
 
 それから第三は、経済大国日本が軍事大国にならないかという問題でございますが、経済大国になりますと政治大国になるということは、これはもう当然でございます。日本が経済大国である。即ち、日本の輸出上の動向によって世界の情勢に影響を与えると云うことでありますから、好むと好まざるとに拘わらず政治的な影響を持つことは避けがたいのでございます。しかし、軍事大国にはならない。これは憲法が明定をしておるのでございす。国際紛争に対して日本は武力をもって解決できない、こういう大前提があるのでございまして、憲法を守ろうということを言う人は、特にこの事実を理解すべきでございます。(拍手) でありますから、日本の防衛力がどのような状態になろうとも、侵略的なものとか軍事的な大国と云うものには絶対に無縁のものである、日本を守るという全く防衛一筋のものであるということを理解すべきでございます。(拍手)

 日台関係が第四点でございますが、日中国交正常化の結果、我が国は台湾との間の外交関係を維持できなくなりましたが、我が国と台湾との間に民間レベルで人の往来、貿易、経済等の実務関係が存続していくことは、いわば自然の流れでございます。政府としては、これら各種の民間交流が今後とも従来通り継続されて行くよう配慮して参りたいと存じます。

 次は、日ソ平和条約交渉についてでございますが、日ソ平和条約交渉については、1月、グロムイコ外務大臣が来日した時に、今年の秋口から交渉を進めたいと云うことでございます。この申し出を踏まえて、過日大平外務大臣が訪ソ致した訳でございます。そうして日ソの間には第1回の交渉が持たれた訳でございます。第2回以後の交渉は来年の春以降ということになっておる訳でございます。でございますので、大平訪ソはこの日ソ平和条約交渉の第1回交渉と云うことになっておる訳でございます。

 なお、その状態における北方領土問題に関するソ連の原則的立場というものでございますが、これは報道されるような少しかたい状態ではございますが、しかし、この問題が平和条約交渉において話し合われることまで否定すると云う態度は示さない。新聞に報道される通り、次には領土問題は問題となり、議題となるのだということを理解していただきたいと思います。しかし、ソ連側の態度は依然としてかたいものがあるということを前提にしてでございますが、政府は、国民的な願望を背景にして、これが返還実現の為に粘り強く、忍耐強く交渉を続けて参るつもりでございます。

 日ソ経済提携、シベリア開発等に対する見解を述べよということでございますが、日ソの間には一年間に約10億ドルの交流がございます。これは年々大きくなりつつございます。なお、シベリア開発、チェメ二の石油開発等を中心にして、六つ、七つの明確なプロジェクトを今検討致しております。これらの問題につきましても、現在は、検討をしておるものもございますし、もうすでに三つばかり片付けたものもございます。内容が固まり次第、国益に沿うものであればその実施に協力して参る、日ソ経済関係は段々と大きくなる、こういう状態でございます。

 それから、日中国交正常化後の国際的な我が国の使命、国際的な地位等でございますが、これはご指摘にある通り、日中の国交の正常化というものは、国際的にも我が国の外交を世界的な広がりというようなものに結び付けたものだと考えるわけでございます。また、先ほども申し上げましたように、経済的に大きな立場を持つ日本でありますので、政治的にも国際的な地位は段々と向上すると共に、国際的に日本の立場や義務も大きくなってまいるということでございます。我々は、平和を主軸として経済的な面から国際協調、拡大均衡というものを押し進めて行く為に、新しいジャパンラウンド、ニューラウンドを提案しておるような状態でございます。

 それから、インドシナ復興に対してはどうするのかということでございますが、これはインドシナ問題が解決することが望ましいことは申し上げるまでもないということでございます。このインドシナ戦争が終われば、日本も民生の安定等に対して可能な限り十分な協力をして参りたい、こう考える訳でございます。これは具体的方策としては、国際的な協力、国際機関を通してというようないろいろな問題がございますが、関係各国との意見も十分調整をしながら、友好的な援助を実施たいと考えております。

 それから、国防についての問題は先ほど申し上げた通りでございます。これは、世界の国々の国防費の状態等先ほども申し上げましたが、やはり、私もこの際申し上げたいのでございますが、ただ、四次防が三次防の数字に於いて倍であるとか、そう云うような意味でもって御質問また非難をされると、それはしかし、三次防の最終段階に於ける46年度から47年度の予算を見ると、今度の四次防の第一年度の金額が8千億でございます。8千億の5年と云うと、今年の予算をそのまま延ばしても、5、8の4兆円になるんだ、そういう答弁になるのであって、私はそういう発言はというものはあまり納得する問題ではないと思うのであります。

 140も国があるのです。その中で、緊張をしておるところの国は別でございますが、全く緊張をしておらないような平和な環境の中にある国でも、一体どのくらい国防費や防衛費を計上しているのか。だから、日本の現行憲法のように全く世界に類例のないものをつくろうという考え方とか、しかも無防備中立がいいんだという前提に立っての考え方とは、我々の考えは合わないのです。どうしても合わないのです。(拍手、発下する者多し) ですから、本当に考えるならば、平和な国であると云うニュージーランドや、それから大洋州のオーストラリアや、スウェーデンやノルウェーや、そういう国々は一体どの程度の国防費を持っているのかと云うことと、まじめに比較をすべきなのであります。これは私が申し上げるのは、自民党と社会党の問題じゃないのです。日本人全体を守らなければならないのが国防であり、防衛であると云うことで、私は、感情とか、過去の行きがかりとか云うものは全然別にして、新しい立場に於いて日本の防衛は論じられるべきである、こう考えております。(拍手)

 それから、青少年の問題でございますが、日本の今日の青少年は、幸いにして戦禍を知らず、日本の目覚ましい復興を目の当たりにしてこられた世代であります。私は、これら青少年諸君が、平和国家として発展を遂げている我が国の防衛に大いなる気概を持ちあわせておると確信をしておるのでございます。

 次に、全国的な土地利用計画の問題と日本列島改造について御発言がございました。日本列島改造というのは、私が常に申し上げておりますように、これはただ一つの政策として述べておるのではないのでございます。明治初年から百年間、90%あった一次産業人口は、今年15.9%になりました。なぜ90%もあった一次産業比率が15%台になったかと云うと、一次産業から二次産業、三次産業へと人口が移動したのであります。その過程に於いて、農村や漁村や山村の人口は減って、都市に人口が集中して参ったのであります。人口が二次産業、三次産業に移動する、即ち、二次産業や三次産業比率が高くなるという過程に於いて、国民総生産と国民所得は増大して参りました。ところが、百年経った今日、都市集中のメリットとデメリットというものは殆ど同じくなった。これからはデメリットの方が大きくなるんじゃないかという風に考えられるようになりました。

 それは公害であります。それはうんと大きな投資をしても、なかなか交通問題は解決しないということであります。幾ら住宅を作っても、都市に集まる人よりも、住宅を作る数のバランスが取れないと云うことでございます。北海道に対する鉄道は、キロ当たり3億5千万円で済むものを、東京や大阪の地下鉄は、キロ当たり75億円かかってもできない。やがてキロ当たり100億になる。しかもその北海道の鉄道は、赤字だと云うのではなく、―初めから建設費の2分の1を補助してもなお大きな都市の地下鉄の運賃だけではペイしないという状態が起っておるのであります。(発言する者あり) だから、まず静かに考えていただかなければならぬのは、誰がやったか、現状をどうしたか、じゃありません。現状をどうしなければならぬのかというのが政治の責任であります。(拍手) そう云う意味で、都市集中の過程に於いては、月給が上がったり、国民所得や国民総生産が上がると云うメリットはあるのです。同時に、今度は公害を除去しなければならないと云うようなデメリットがあるのです。そう云う意味で列島の改造が必要だと述べておるのでございます。

 皆さん、土地の価格を引き下げるとすれば、根本的な問題は供給増やすよりないのであります。供給を増やすにはどうするか。列島改造以外に解決の道はない、こういうことでございます。(拍手) しかも、列島改造が行われることによって、既存の都市は理想的なものに改造せられるのであります。(拍手) その意味で、全国的な土地利用計画が必要であるということは申すまでもないことでございます。これは今列島懇談会でも検討致しております。日本人のあらゆる英知を傾けて、60年展望、65年展望、70年展望という長期的な視野に立って、土地の全国的利用計画を定めて参りたい、こう思います。(拍手) それから、土地利用の問題ばかりではなく、土地の利用規制の問題、また、現に行われておる投機的な問題に対する税制上の問題、抑制等十分に配慮して参ります。

 次に、物価問題でございますが、御指摘の通り、消費者物価は今年度は4%台に推移をする状態でございますが、卸売物価が遺憾ながら上昇過程にあります。ただ、その内容を見ますと、鉄鋼、繊維、木材等が値上がりをしておるのでございますが、鉄鋼に関しては不況カルテルの問題もございます。なお、繊維、木材については海外市況の問題がございます。これらの問題については十分な抑制が可能だと思いますけれども、この問題に対しては、一層注意深く見守り、適切な処置をとって参ります。ただ、消費者物価の問題については、いろいろ云われますけれども、私は、ここで率直に申し上げると、消費者物価の異常の高騰の直接の一番大きな原因は何か。これは、一つは都市に過度に集中をしておるからであります。過度集中というものが解決しない限り、物価の根本的対策にならないということが一つあります。

 第二の問題は労働賃金の問題であります。低生産性部門の産業も一律に、生産性の高い産業と同じように賃金が引き上げられるという問題が物価に大きな影響を持つことは、これは避けがたい事実でございます。(拍手) こういう問題も、流通機構の整備、自由化の促進、また構造改善等々十分な配慮によって対処して参りたいと思います。年金の改善問題に対しては、先ほど申し上げた通りでございます。また、社会保障の問題についても先ほど申し上げましたので、細かくは申し上げませんが、心身障害者の問題、また重度心身障害児や非常に重い病気を持っておる方々、難病、老人の病気等に対しては特に配慮して参りたい、こう思います。年金の問題、一つだけ申し上げると、最も重要なものは、老人年金に対しては、少なくとも積極的な姿勢を示さなければならない、こう考えております。

 それから、大型補正予算につきましては、インフレ予算との批判もございますが、これは、今回の景気回復は財政支出と個人消費を中心にしたものでございますので、在来のような状態でインフレ予算と考える必要はないと思います。また、インフレを招くとは考えておりません。しかし、物価動向につきましては、今後とも十分に配慮し、経済運営に全きを期して参りたいと存じます。

 それから、円の切り上げ問題でございますが、これは昨年の暮れに初めて多国間調整が行われ、円平価の調整が行われました。しかし、これだけの大きな問題でございましたが、必ずしも初期の目的を達成してはおらないということでございます。でございますので、今度のIMF総会に対して我が植木大蔵大臣も演説をした訳でございますが、シュバイツァー専務理事が、日本に対してだけ円平価の再切り上げを求めない、こう云われたのは、求めるようなことによって全てが解決できないと云うことを端的に指摘しておる訳でございます。

しかし、円平価調整と云う大きな事態があったにも拘わらず、日本はその後依然として貿易収支は黒字を続けております。今度は、このような状態に於いて、よそからの圧力、よそから求められるというだけではなく、日本だけが貿易収支、経常収支の大幅な黒字を続けておると云う状態で、各国の理解や協力が得られるはずはないのであります。新しい国際社会の中に於ける日本として、日本自身の英知と努力によって、少なくとも三ケ年以内には経常収支をGNPの1%以内に押えなければならない。こう申し上げておるのでございまして、円の再切り上げ問題と云う問題は、もっと新しい角度から見なければならない問題だと思います。

今円平価を切り上げられて、中小企業はこれに耐えられるはずはありませんし、中小企業だけではなく、それは利益もなし、影響するところだけ非常に大きいということであって、平価の再調整を避ける為にも、あらゆる政策を進めなければなりません。その意味で、今度の補正予算もお願いをし、国際収支対策も議会でお願いをしておる訳でございます。(拍手)

 総合農政の問題につきましては、これは総合農政、新しい国際的に競争できるようにと云いますが、それは理想であって、現実的には一歩ずつ総合農政を進め、適地適作等をやって参らなければなりませんが、ここで一言申し上げる問題は、日本の農村というものが純農政だけでやっていけるのかどうかという問題であります。これは、与野党を問わず考えていただきいのは、結局先ほども申し上げた通り、百年間に90%の一次産業人口が15%台に減ったのです。しかし、今なお減反政策を必要とするのでございます。その意味で必要なのは、申すまでもなく、これから15.9%という一次産業比率は10%、なお減るのでありましょう。

 この二次産業や三次産業に転出をしなければならない一次産業人口をそのまま都市に集めるとなると、これは物価問題とか土地問題というものが破局的になると考えなければなりません。そこで考えたのが、与野党一致で通した農村工業導入化なんであります。それだけではありません。新産業都市建設法であり、地方開発を必要とするのはそういうことなんであります。ですから、一次産業人口からはじき出されるであろう、二次産業、三次産業へ移動しなければならないと云う人たちに、農村工業導入法や工業再配置法によって職場を与えよう、そして農工一体と云う新しい時代をつくらなければ―そこが本当に日本の農政のポイントであります。農業自体を専業農家と兼業農家というものに分けながら、どのような理想的な姿をかくかということでなければならない。それは、例を引いて申し上げると、返還された沖縄に、二次産業と三次産業の比率を上げなければ、沖縄の県民の所得は増大しないという事実を見れば、何人も否定できない事実であります。(拍手)

 中小企業の問題は、今も申し上げましたように、円平価の問題に徴しても重大な問題であり、国際競争力に耐え得るような中小企業の育成に努力をして参ります。なお、新産業都市の建設、内閣機構の強化、行政機構の再編成、法制制度、慣例等の見直し、新しい政策を遂行し、責任政治を担う為に果たさなければならない幾多の問題に対して御指摘がございましたが、この問題に対しては、また予算委員会で詳しく申し上げることにします。以上。(拍手)

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