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2012年1月 5日 (木)

1973.1.29日、衆議院における自由民主党・倉石忠雄の質問に対する田中首相答弁

 倉石君にお答えを致します。まず、経済協力の在り方を再検討し、政府開発援助を量、質の面で拡大をすべしということでございますが、我が国の経済協力は、1971年実績におきましては、量的におきまして米国に次ぐ第二位の地位を占めているのでございます。しかし、質的には、政府援助は約その24%にとどまっておりまして、DACの平均数字を下回っております。世界第二位の経済力を持つに至った我が国でありますので、政府開発援助の量的拡大、借款条件の改善、アンタイイングの推進等、重点を置いて参りたい、こう考える訳でございます。

 第二には、インドシナ地域における復興、和平の定着の為のアジア諸国による国際会議の開催等についての御発言でございましたが、先ほども申し上げました通り、インドシナ地域の復興と安定に貢献するには、単独で協力をする場合、国際協力を通ずる場合、いずれの方法も考えられますが、我が国と致しましては、両面を考究すべきだと考えておるのでございます。至難の事業であるだけに、多くの国々の共同参加が求められることが効率的ではないかと考えております。その為には、社会体制を異にする国々をも含めた関係各国との相談を重ねて参りたい、こう考えます。しかし、バンドン会議のような派手なものは必ずしも考えておらない訳であります。地道な外交努力を展開することが先決であり、その段取りはかねてから検討しておる次第でございます。

 第三は、日ソ関係についての御発言でございましたが、日ソ関係は、経済、貿易、文化の各分野において年とともに着実に進展を致しておりますことは御承知の通りでございます。政府としては、今後とも互恵平等の原則の上に立って、隣国ソ連との多面的な関係の発展を図る方針でございます。しかしながら、同時に、日ソ関係を真に安定的基礎の上に発展せしめる為には、懸案の北方領土問題を解決し、平和条約を締結することが不可欠でありますので、政府は、引き続きソ連との交渉に一層の努力を続けて参りたい、こう考えます。(拍手)

  貿易、経済問題で日米間にある感情のもつれをどうするかということでございますが、日米両国は経済関係の維持、強化が、両国の為ばかりでなく、世界経済の発展にとっても不可欠であることを十分認識を致しておるのでございます。私は、ハワイでニクソン大統領と話し合いを致しましたときに、日本としては、両三年以内に国際的な均衡を達成するよう努力をすることを申し述べ、理解を得て参っておる訳でございます。対米貿易収支の不均衡是正に対しては、政府も、国民の理解を得て、精力的に行っておる訳でございます。しかし、今年末までの予想を致しますと、去年よりもなお日本から米国への貿易、俗に云う対米出超が拡大を致しておるのでございまして、対米貿易是正の為に、なお一層の努力を続けて参らなければならない、こう考えておるのでございます。アメリカに対しても、日本に対する輸出の促進等に対して努力をしてもらうよう、要請も致しておる訳でございます。日米間の貿易不均衡と云うような問題は、どうしても国民各位の協力を得て、正常なものにしなければならない、それは焦眉の課題であると云わざるを得ないのであります。政府はこれが解決に全力を傾けるつもりでございますが、国民皆さんのご協力も切に願いたいのでございます。(拍手)

 国の安全保障に対する基本的見解について御発言がございました。自国民の生命と財産を守らなければならないことは国の義務であります。その為、国防の基本方針に基づいて、最小必要限の自衛力を漸進的に整備し、将来、国連が有効な平和維持機能を果たし得るに至るまで、どうしても日米安全保障体制を維持しなければならぬのであります。先ほどもお答えを申し上げましたが、最も合理的な負担において専守防衛の実を挙げておる日本としては、日本だけで平和と独立を守れないと云う状態でありますので、日米安全保障条約と合せて、日本の完璧な安全を保障しておる、これは不可分なものであるということを、十分ご理解いただきたいものでございます。(拍手) 言うなれば、日米安全保障条約と云うものがもし廃棄されて、日本だけで防衛を行うとしたならば、今のような四次防が大きいなどという考え方、そんなものでは日本が守れるものではないという事実を、十分ご理解をいただきたい、こう思うのでございます。(拍手) その意味で、国連が有効な平和維持機能を果たし得る日まで、日米安全保障条約を維持して参る、こう申し上げておるのでございます。

 しかし、これらの問題だけで解決できるのではなく、国際協調の為の積極的な外交、物心両面における国民生活の安定と向上、国民が心から愛することのできる国土建設等の内政諸施策を推進して、これらの努力の総合の上に、我が国の独立と安全が保障されると考えるのでございます。先ほども御発言がございましたが、我が国は、平和な島国に閉ざされて、恵まれた四半世紀を過ごして参りましたので、ややもすれば防衛問題に対する国民の関心が薄いかもしれませんが、その当否はさておき、国会の内外において論議が積み重ねられ、国民の合意が得られるように、政府は努力をして参りたいと考えるのであります。

 基地に対する住民感情の問題等に対しての御発言がございました。しかも、基地に対する住民感情の問題と、安保廃棄というような問題、これは別な問題ではないか、別の問題として取り扱うべきであるということでございました。また、地域開発に支障のないように、支障となるものについては返還を求めたり、周辺整備事業に万全を期すようにという御注意でございますが、全く同感でございます。現在、いわゆる安保反対と云う政治的な立場と、地域的な基地問題とが結び付けられているという側面があることは、全く御指摘の通りなのであります。我が国の安全を確保し、アジアの平和に資する為には、日米安全保障条約体制が必要であり、その為に必要とされる米軍施設、区域は、日本国民全体の安全と平和の為に存在をするのでございます。従って、施設、区域周辺住民の不便や負担は、国民全体でこれを分かち合うということでなければならぬのであります。(拍手) 政府としましては、地域の福祉と発展にとってできる限り支障にならないように努力を傾けますとともに、周辺対策に万全を期する所存でございます。先般の日米安保協議委員会において十か所の施設、区域の整理統合が合意されました。これからも積極的に、地域開発の必要のあるところの基地の周辺整備等、住民各位の期待に応えられるように整備をして参りたいと考えておるのでございます。

 住民登録の拒否の問題についてでございますが、自衛隊についての住民登録が事実上拒否されておることは、国民としての権利義務行使の基礎となるものだけに、まさに憲法で保障された基本的人権に関わる重要問題であって、甚だ遺憾なことであります。こんなことが行われてはなりません。(拍手) こういうことが現に行われておって、憲法の基本的人権などを論ずるということ自体がオカシイのであります。(拍手) 政府は、この問題を地方自治の基盤をも脅かす重大な問題であると考えており、地方公共団体の良識を信頼して今日までその是正方を指導してきたところでありますが、今後もこのような認識に立って、速やかな事態の解決の為に更に努力を重ねます。(拍手) しかし、これは小さな問題ではありません。与野党とか、考え方の違いではないのです。憲法の基本的人権を守るということの第一ページにある問題であります。(拍手) 目的の為に手段を選ばないというような問題に、かかることが使われることは甚だ遺憾であります。(拍手) 

 賃金上昇が生産性上昇を上回り、物価に跳ね返ることにらならないかと云う御指摘でございますが、昭和43年度以降、賃金上昇率が生産性上昇率を上回る傾向が見られます。これは、物価問題の元となっておる先進工業国で、賃金が生産性で賄えない、賃金が生産性を上回るというような問題が続くと、どうしても、西欧先進国に現われておりますように、卸売物価に影響致します。それはすぐ消費者物価に繫がるのでございます。そういうことが起らないようにと、先ほども施政方針演説で政府の基本的な考え方を述べた訳でございます。(拍手) その意味において、長期的に見ますと、我が国においては、両者は均衡がとれて推移をして来たと認められておるのでございます。しかし、最近、物価や賃金の上昇が目立っておりますので、労使における価格及び賃金の決定が、国民経済全体の中で均衡のとれた形で行われることが望ましい、こう考えておるのでございます。

 国民福祉の指標を策定し、福祉社会のビジョンを国民に示さなければならないという意味の御発言でございました。全く御指摘の通りでございます。政府は、今年度を社会福祉の年として、社会福祉拡充を目指して予算編成を致したのでございますが、新しい長期経済計画の最重点項目の一つとして、国民福祉の充実も考え、またこの長期経済計画の中に、長期間にわたる社会保障の位置づけということを答申していただこうということを考えております。なお、この答申というものをいただきましたら、体系の整備等も含めて、計画的に社会保障の充実を図って参りたい、こう考えておるのでございます。

 教育の根本に対する所見如何という問題でございますが、「教育は、次代を担う青少年を育て、民族悠久の生命をはぐくむ為の最も重要な課題である」と演説で申し述べましたが、私は教育が一番大切な問題であるとしみじみと感じておるのであります。(拍手) お互い人の子の親であります。我々の生命には限りがあります。しかし、日本民族の生命は悠久なのであります。我々の子供や孫が国際人として尊敬され褒められるような人になって貰いたいと思わない親はないと思います。私は、そういう意味で、教育と云うものは、知識を得るところではなく、人格形成の場でなければならない、(拍手) こう真に考えておるのでございます。

 日本人として培わなければならない心は本当に教え込まれるような理想的教育環境を整備する為に、政府は思い切った施策を行うつもりでございますし、国民がこの教育充実の為に真に努力を傾けられ、政府の施策に協力されることを心から期待してやみません。(拍手) 特に先ほど倉石君の述べられた通り、教育の任務は民族的伝統の継承と民主社会の規範の体得の上に個人の可能性の豊かな開花を図ることによって平和な国家、社会の形成者を育成することができるのだと云う考え方も全くその通りでございます。(拍手) お互い、政府を鞭撻していただいて、世界に冠絶した、日本に本当に適合した教育環境を作ることに努力をして参りたいと思います。(拍手)

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コメント

これほどの君子統治者は空前絶後であります。
万人のために世界平和をこよなく希求する真情から無限に湧き出す仁徳に溢れたすべての言葉に対して感涙あるのみ。

読ませていただきまして、心よりれんだいこ先生に御礼申し上げます。
とおりがけ拝


投稿: 通りがけ | 2012年1月11日 (水) 07時59分

 通りがけさんちわぁ。役に立って本望です。新発見角栄の旅は今後も続けようと思います。

投稿: れんだいこ | 2012年1月11日 (水) 10時00分

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