« 2012衆院選の当選者落選者疑惑考 | トップページ | 生活党への期待と意義考その1、小沢どんの政治履歴その1、自民党時代考 »

2013年1月15日 (火)

マレーシア元首相マハティール氏の1970年代日本論考

 「★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK142 」の gataro氏の2013.1.15日付け投稿「<インタビュー>ルックイーストはいま マハティール・ビン・モハマドさん(朝日新聞)」に思うところあり、以下ブログしておくことにする。原文は「朝日新聞 2013.01.15 東京朝刊 11頁 オピニオン1、<インタビュー>ルックイーストはいま マハティール・ビン・モハマドさん」とのことである。

 マハティール氏につき、どこかで書きつけた記憶があると思い探すと、「田中角栄論」の「田中角栄の思想と政治姿勢、資金源、人脈考」の「角栄-大平連合の政治史的意義」の「Re:れんだいこのカンテラ時評その122、増山榮太郎氏の「角栄伝説ー番記者が見た光と影」を評すその2」でコメントしていた。以下、補足することにする。

 インタビューゲストのマハティール氏の履歴は次の通り。1925年生まれ。マラヤ大学医学部卒。医学博士。開業医をへて、1981年から2003年まで22年間マレーシアの首相を務めた。そのマハティール氏は、1982年に「日本を見習え」とルックイースト(東方)政策を唱えた。この意味するところは、この発言は中曽根政権時代の1982年であるが、中曽根政権時代の政治の評では断じてない。中曽根政治が「戦後の総決算」なる大言壮語と共に壊し始めた「1970年代までの日本に対する郷愁の弁」である。マハティール氏が「日本を見習え」と唱えたのは、1970年代に結実した田中政権に至るまでの戦後保守ハト派政治への賛歌である。かく解すべきだろう。

 それから30年余りを経て、マハティール氏は、「いまや日本の過ちから教訓を得るときだ」、「韓国により多く学ぶ点がある」と苦言を呈している云々。この意味するところは、中曽根政権時代以降の日本が、その憧れの日本を自ら壊して来たことに対する痛烈な批判である。「アジアを代表する知日のリーダーは、停滞が続く日本にいらだちを隠さない」とあるが、そのいらだちの原因をかく解するべきだろう。

 マハティール氏が「在りし日の日本」を見習いルックイースト政策を掲げたことに対し、「成果をあげたのでしょうか」の問いに次のように答えている。「マレーシアの発展に寄与したことを疑う余地はない。労働に対する真摯(しんし)な姿勢、戦後復興への熱意と愛国心、独自の経営スタイル、職場での規律を日本から学んだ。貧しかったわれわれは、日本人の価値観や倫理観を見習い、民族(マレー系、中国系、インド系)間の協調を保つことで発展しようと考えた」、「多くの日本企業を誘致し、留学生を日本に送りました」、「日本は素材を輸入し、加工して輸出していた。貿易立国をめざすマレーシアにとって、技術を通して世界市場に打って出るモデルだった」。

 「当時の日本は経済的に日の出の勢いでしたが、いま長い停滞のなかにいます」の問いに次のように答えている。「日本が苦境にあるのは、経済大国への道を切り開いた自らの価値を捨て、欧米に迎合したからだ。例えば終身雇用制などに重きを置かなくなった。政府の指導や民間企業との協力関係はいまや犯罪視される」。

 「系列、行政指導、日本株式会社といった、欧米から批判されたシステムにあなたは肯定的でした。それらを捨てたことが間違いだと」の問いに次のように答えている。「大きな誤りだった」、「われわれが見習ったのは、現在の日本がやっていることではない。いまはあなたたちの犯した過ちを繰り返さないようにと学んでいる」。

 「しかし90年代以降のグローバリゼーションは、そうした日本のシステムの生き残りを許さなかったようにみえます」の問いに次のように答えている。「確かにグローバリゼーションはやってきた。それは欧米のアイデアであり、彼らの利益のために考え出された。新たなシステムを採用すれば、混乱はつきものだ。日本は国内の状況を斟酌(しんしゃく)せずに受け入れた。それまでのやり方とグローバリゼーションを調和させることに失敗した」。

 このやり取りから窺えるのは、質問者が「1970年代までの日本に対する批判」を尤もなこととして中曽根以降の国際主義路線を是認し、その立場からマハティール氏の「在りし日の日本賛美論」に疑問を呈し、マハティール氏が反論している姿である。日本人が日本を批判し外国人が日本を耽美すると云う滑稽なやり取りになっていることが分かろう。

 これをもっと正確に云うと、1970年代半ばのロッキード事件で当時形成されてい戦後保守ハト派の二大派閥=田中派と大平派の鉄の同盟に楔を打ち込み、それ以降主流派に転じ始めた戦後保守タカ派の政権になって以来、日本は、マハティール氏が称賛した「在りし日の日本」を自己否定し始めた経緯に対して、質問者がその流れを是認し、マハティール氏が批判していることになる。そういう二人の逆さやりとりであるところに、この質議の面白さがある。

 朝日新聞記事のキモの部分は以上にある。この後、その後の日本政治論、韓国との比較論、中国論へと続いている。この下りのやり取りはさほど意味がないので割愛する。

 次に、「日本は経済的に自信を喪失し、その反動として右傾化が進んでいるとの指摘があります」の問いが為され、マハティール氏は次のように答えている。「危険なことだ。日本が自信を取り戻すのは軍事ではなく、経済力を回復させるしかない」。

 「97年のアジア通貨危機でマレーシアは周辺国と違って国際通貨基金(IMF)の支援を求めず、通貨の変動相場を固定相場制にして、しのぎました」の問いに対して次のように答えている。「IMFを頼らなかったのは、自国のことは自国で決めるためだ」。

 「10年以上たって、リーマン・ショックがあり、続いて欧州危機が起きました」の問いに対して次のように答えている。「欧米では、市場が自律的に需給を調整するといって、政府の規制を嫌う。だが金融市場はシステムを乱用して回復不能に陥った。ヘッジファンドが錬金し、銀行は無理な住宅ローンを貸し付ける。借り手は払えなくなり、銀行は債務超過で危機に陥る。強欲の結末だ。穴埋めに中央銀行が札を刷り、倒産企業を政府が支援している。かって批判してきたことをそのままやっているのだ」、「戦後、日本や韓国など東洋の国々が安く良質な製品をつくるようになった。欧米は製造業の分野でかなわなくなり、金融市場に活路を求めた。サブプライムローン、レバレッジ……。製品も雇用も生まない。商いとはいえない、ギャンブルだ」。

 「米国のいいなりになる日本政府に何度も不満を表明しました。米国の意向をくんで、あなたが唱えた東アジア経済会議(EAEC)構想に反対した時やイラク戦争を支持した時です。そんな日本に学べと号令をかけたことを後悔はしませんか」の問いに対して次のように答えている。「われわれが見習ったのは、高い職業倫理で戦後の復興を果たした日本だ。米国の影響下にある日本ではない。米国はEAECに中国を含めたから反対した。環太平洋経済連携協定(TPP)でも中国を除外しようとする。われわれは東洋の人間だ。敵をつくるのでなく、自分たちの問題は自分たちで解決すべきだ」。

 マハティール氏の弁はこれでも抑制的に語っていると窺うべきだろう。マハティール氏が見据えているのは現代世界を我が世の春とばかりに壟断している国際金融資本帝国主義である。次のように云いたかったはずである。れんだいこが忖度して書きつけておく。

 世界を連中の都合のよいようにはさせない。各国がそれぞれ自律して共栄圏を創る国際関係を生み出さねばならない。その為に何を為すべきか、かっての日本には学ぶべきところがあり大いに学ばせて貰った。今の日本は逆漕ぎ専門で学んではいけない国になってしまっている。一体日本よ汝はどこへ連れて行かれようとしているのか分かっているのか。私の死に出の置き土産に云わせて貰う。日本よ覚醒せよ、余りにも可哀そうでならない。

 2013.1.15日 れんだいこ拝

|

« 2012衆院選の当選者落選者疑惑考 | トップページ | 生活党への期待と意義考その1、小沢どんの政治履歴その1、自民党時代考 »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1453913/48769392

この記事へのトラックバック一覧です: マレーシア元首相マハティール氏の1970年代日本論考:

« 2012衆院選の当選者落選者疑惑考 | トップページ | 生活党への期待と意義考その1、小沢どんの政治履歴その1、自民党時代考 »