« 三島最後のドキュメント考その7の2、「割腹」事件のれんだいこ推理補足 | トップページ | 読書の拝三法 »

2013年9月21日 (土)

れんだいこの三島由紀夫論その4、保守論壇の再解析考

 れんだいこの三島由紀夫論の最後を、三島論を通じての保守論壇の亀裂とれんだいこによる再解析に向かうことにする。これに恰好の論文が山崎行太郎氏の2013.9.17日付けブログ「保守論壇亡国論』と西尾幹二論」に発表されている。西尾幹二氏の三島論、三島論を廻る江藤淳と小林秀雄の対立に対する西尾見解に対して山崎見解を対置している。

 ブログによれば、西尾氏は著書「三島由紀夫の死と私」その他で、三島を保守論壇の「神」として絶賛する他方で、三島の割腹自殺を否定的に評価する江藤淳批判に精を出している。西部邁も櫻井よしこも、江藤淳を批判・罵倒することから言論活動を開始している。「本書で取り上げた保守論客たちの中で、思想的影響を受けた人として江藤淳の名を挙げているのは、中西輝政ぐらいであろう」とのことである。

 三島の割腹自殺の評価を廻って「江藤淳&小林秀雄対談」が為されており両者は激しく火花を散らしている。小林は吉田松陰の処刑死と同様の線で三島の割腹自殺を惜しむ見地を披歴している。他方、江藤は「ごっこに過ぎない」と敢えて無駄な死批判の見地を披歴している。山崎氏はこの対談を次のように評している。「江藤淳と三島由紀夫、そして小林秀雄の戦い。私はこの対談を、どちらが正しく、どちらが間違っていると思いながら読むつもりはない。小林秀雄も江藤淳も妥協せず、世論や時代に迎合せず、真剣勝負を行っている。この思想的・文学的戦いこそ本物であった、と私は考える」。

 ところが、西尾氏は「三島事件について、福田恆存や中村光夫をはじめ、多くの作家や批評家たちが沈黙し、発言を逡巡する中で、西尾は江藤淳を激しく批判・罵倒し始める」。「江藤淳&小林秀雄対談」で三島の死を肯定的に評価した小林を良しとし、批判的な見地を披歴した江藤を「三島の死に対する冒涜」としてクズ呼ばわり批判で溜飲を下げている。

 山崎ブログの要点は以上であるが、これに啓発されて、れんだいこ論を投下し介入してみたい。れんだいこは先に2013.9.12日付けの「三島最後のドキュメント考その1、本稿の意義」を皮切りに数ブログの三島論を発表した。

 そこで、三島最後の真相は云われるところの三島の天晴れな割腹死ではない。当局に拉致監禁されたうえでの強制切腹死事件であり、当の三島は半ば生還し半ば殺されることを覚悟のうえで飛び込み、結果的に死が強制されたものである。それは儀式殺人の感がある処刑であったとの推理を披歴した。三島事件をかような見地から推理したのは、れんだいこが初めてではない。れんだいこ推理を呼ぶ先行のものがあり、それを少々精緻に論述したところに値打ちがある。

 さて、こうなると、事件の真相に迫らず、これまでのような「三島の天晴れな割腹死」を賛美する一連の評論が急速に色褪せてこよう。逆に三島の死を批判した江藤の論の方が却って三島の心情を正確に忖度しているのではなかろうかと云うことになる。考えてみれば、江藤の三島事件批判は何もそう慌てて死に急ぐことはあるまいとする見地からの、「三島批判ではない三島の死批判であった」ことに気づかされる。例えてみれば、親が子を叱る時のような慈愛に満ちた、それ故に手厳しい批判だったのではなかろうか。

 と云うことは逆に、西尾の三島の死賛美が、三島を追悼するに名を借りた軽薄なものであり為にする江藤批判に過ぎなったのではないかと云うことになる。西尾の三島思慕の至情がエスカレートしたものであるなら幸いである。どちらであるかは分からない。それと、小林の三島の死賛美は真贋見抜くことで定評のある名評論家にしては少々称賛が早過ぎたのではなかろうかと云うことになる。

 山崎氏の2013.9.17日付けブログ「保守論壇亡国論』と西尾幹二論」から以上の類推が可能になる。そして以下の教訓に至る。いわゆる評論の難しさ、その評論を受け止める難しさを知るが良い。元々高度な能力が問われているのに、人は手前の能力に応じて、あるいは請負の立場からお気に入りの論を選んでいるに過ぎない、と云う習性が見えてくる。

 こたびは三島事件を廻ってのものであるが万事に通用する。今後はくれぐれも上滑りしてはなるまい。何事も事実で検証してから立論せねばならない。これをせぬままの子供騙しに騙されてはなるまい。との言を添えておく。

 2013.9.21日 れんだいこ拝

|

« 三島最後のドキュメント考その7の2、「割腹」事件のれんだいこ推理補足 | トップページ | 読書の拝三法 »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1453913/53338957

この記事へのトラックバック一覧です: れんだいこの三島由紀夫論その4、保守論壇の再解析考:

« 三島最後のドキュメント考その7の2、「割腹」事件のれんだいこ推理補足 | トップページ | 読書の拝三法 »