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2013年9月13日 (金)

三島最後のドキュメント考その7、「割腹」事件のれんだいこ推理

 れんだいこの疑問はこうである。古賀浩靖は当時23才の楯の会会員であるが、果たして三島、森田の首を刎ねる剣技能を持ち得ていたのかどうか。首刎ねなどは素人ではできないのが常識である。居合を習っていようが剣道を心得ていようが、よほどの手練れでないとできない。当時23才の古賀浩靖が「習った程度」で「できた」という根拠が分からない。これは武道の心得のある者には常識である。そういう訳で、これについて古賀浩靖の克明な証言を知りたい。古賀は、事件後、裁判に付されており、それなりの証言をしていると思われるが裁判記録ではどう明らかにされているのだろうか。ネット検索には出てこない。こういう場合、隠されていることを意味する。

 次に、首を刎ねた刀への疑問が湧く。「三島持参の日本刀・関孫六」で処したとしか考えようがないが、三島の首を落とすのに三太刀もしくは四太刀の難儀をしている。既に相当に刃こぼれしているであろうに「森田の首は一刀のもとに切られていた」。刃こぼれ太刀で森田の首刎ねがスパッと斬られていることになる。技能上の問題だけでなく刃こぼれと云う物理上の問題が介在していたはずである。「刀先がS字型に曲がっている」との記述もある。そういう関孫六で「森田の首が一刀のもとに切られていた」ことが不自然過ぎよう。そういう疑問が湧く。

 更にそもそも三島がなぜ深く切り込む切腹をしているかにも疑問が湧く。これについては既に議論がなされている。この時点で三島は映画「人斬り」で田中新兵衛に扮して切腹模擬している。深く切り込む切腹では介錯が容易でないことを承知している筈である。にも拘わらず、相当深く真一文字に切っているのは切腹の仕方として不自然過ぎる。森田の浅切りの方が切腹作法に適っており、三島の深切りの方が反している。これは三島武士道に対する冒涜ではあるまいか。ここまでの疑問は争いようのないことのように思える。

 これからが推理になる。更に遡れば、総監室へ何の支障もなく戻れ、事が首尾よく進展したとすることがそもそもオカシイ。三島がバルコニーで演説していた間、益田総監が縛られ通しで居たことになるが、そのこと自体が信じられない。事件は陸上自衛隊駐屯地内である。おめおめと最高幹部の東部方面総監を救出できるのに、要求書に基づく打ち合わせがあったにせよ縛られたままにしておくなんてことがあるだろうか。警視庁機動隊一個中隊が総監室に到着していたはずである。手をこまねいて三島演説を聞いていたと云う構図が嘘臭過ぎる。容易に推理できることだが、三島の演説中に益田総監が解放されていないとオカシイ。

 そうなると総監室に戻った三島に待ち受けていたのは屈強な精鋭たちによる拘束しかあるまい。この時、三島が応戦している可能性がある。発表では、総監人質事件発生時に自衛官が突入し複数負傷しているが、この時の負傷か三島が総監室へ戻ってきた時の負傷か定かではない。三島が総監室に戻った時の乱闘による負傷の可能性を求めるべきではなかろうか。

 こうして疑問が次から次へと生れる。真相は藪の中であるが、れんだいこ結論として、三島と森田が総監室に戻った際に、その場で捕捉され、後は操られるままに切腹死を強制させられたと推理する。故に三島は作法にあるまじき深い切腹で応じ、森田は腰砕けの状態で介錯に向かい、役に立たなかったので手練れに代わり首を切り離させ、しかる後に森田の首刎ねを演じた。これが一部始終なのではあるまいか。古賀が介錯したなる説は嘘臭い。してみれば「強制割腹死」の可能性があるとしたい。こう疑う余地が十分にある。

 決め手は総監室に居た者たちの証言である。最低限その場に居合わせた者として益田総監、生き残った楯の会の古賀浩靖、小賀正義、小川正洋が考えられる。総監室に突入した自衛官の証言も必要であろう。彼らがどう証言しているのかが肝心であるがネット検索では出てこない。妙なことに揃いも揃って皆が割腹事件を完黙している気配が判明する。こういう場合、隠されていることを意味する。れんだいこ推理に従えば、三島と森田を補足した者たち、それを指令した者たちこそが最重要人物であるが、そういう者は例によって陰に隠れるとしたものである。この推理に立つと、世上の「三島美学の完遂としての割腹死事件」の延長上で為されている評論の軽薄さが透けて見えてこよう。

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