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2014年6月13日 (金)

日本列島改造論 抜粋その3

 「奇跡ではない日本の成功」。戦後の日本経済は、平均して実質10%以上の高度成長を続けてきた。これは、日本経済が戦後の復興を遂げる過程だけでなく、その後も衰えることなく続いた。35年から45年までの平均成長率が実質で11.1%と云う数字がこれを物語っている。このような経済成長は、世界史上にも例がなく、世界各国から‘日本の奇跡’として高く評価された。

 その原因について、多くの専門家が次のような理由を挙げている。第一は、日本が現行憲法のもとで平和主義を貫き、軍事費の負担をできるだけ少なくしてきた。第二は、教育水準が高く、勤勉な労働力が豊富に存在した。第三は、新技術や新設備を積極的に導入して技術革新に努めた結果、産業の生産性が向上し、その国際競争力が強化された。第4は、企業経営者の積極経営を支える金融機関が存在し、政府も建設的な役割を果たした。第6は、日本経済には好循環とも云うべき‘成長のサイクル’ができた。これは、民間企業の設備投資を起動力とし、投資が投資を呼ぶと云う循環であった。(60P)

 「福祉は天から降ってこない」。一部の人々は「高度成長は不必要だ」、「産業の発展はもうご免だ」とか「これからは福祉の充実を図るべきだ」と主張している。しかし、「成長か福祉か」、「産業か国民生活か」と云う二者択一式の考え方は誤りである。福祉は天から降ってくるものではなく、外国から与えられるものでもない。日本人自身が自らのバイタリティーをもって経済を発展させ、その経済力によって築き上げるほかに必要な資金の出所はないのである。(63P)

 「物価上昇を押える」。従って、物価上昇を抑制するためには、第一に農業や中小企業、サービス業など低生産部門の近代化、合理化を進めて、その生産性を向上させることである。第二は道路や鉄道などを整備し、流通機構の近代化を大胆に進めて流通コストを切り下げることである。第三に産業や人口の思い切った地方分散によって、物価に占める地価負担を軽減することである。こうした政策の総合的な展開によって、物価上昇を抑制する道が開かれよう。(65P)

 「産業構造は知識集約型へ」。そこで今後の産業構造は、経済成長の視点に加えて、わが国を住みよく働きがいのある国にするという視点から選択されねばならない。つまり、今後の日本経済をリードする産業は、在来の重化学工業ではなく、公害や自然破壊度が少ないかどうか(環境負荷基準)、国民が誇りと喜びをもって当たれる仕事かどうか(労働環境基準)と云う尺度から選び出すことが必要である。

 このようにみると、将来の産業構造の重心は、資源、エネルギーを過大に消費する重化学工業から人間の知恵や知識をより多く使う産業=知識集約型産業に移動させなくてはならない。知恵や知識を多用する産業は、生産量に比べて資源エネルギーの消費が相対的に少ないので、公害を引き起こしたり、環境を破壊することも少ない。また、教育水準が高くなっている労働力に対し、単純労働ではなく、知的にも満足できる職場を多く提供できるので、人々が誇りと喜びをもって働くことも可能になるだろう。言い換えれば、知識集約産業こそは、産業と環境との共存に役立ち、豊かな人間性を回復させるカギを持つものである。

 それでは、知識集約型産業構造を形成するためにはどうするか。知識、技術、アイデアを多用する研究開発集約産業(電子計算機、航空機、電気自動車、産業ロボット、海洋開発)、高度組立産業(通信機械、事務機械、公害防止機器、教育機器など)、ファッション産業(高級衣類、家具、住宅用調度品)、それに知識、情報を生産し提供する知識産業(情報処理サービス、ビデオ産業、システム・エンジニアリング)などを発展させると共に、一般産業の製品や工程について、その高度化を通じて知識集約化を進めて行くことである。(68P)

 「福祉が成長を生む長期積極財政」。今後の財政運営は、単年度均衡の考え方から脱して、長期的な観点に立った財政の均衡を重視して行くべきである。つまり、現在の世代の負担だけではなく、未来の世代の負担をも考慮した積極的な財政政策を打ち出すことが必要である。子供や孫たちに借金を残したくないという考え方は、一見、親切そうに見えるが、結果はそうではない。生活関連の社会資本が十分に整備されないまま、次の世代に国土が引き継がれるならば、その生活や産業活動に大きな障害が出てくるのは目に見えている。美しく住みよい国土環境を作るには、世代間の公平な負担こそが必要である。

 このような積極財政は、社会資本の充実や教育、医療の改善、技術開発の促進に繋がるだけでなく、経済の高成長を促す道にもなる。これは単に公共投資の拡大や所得の再配分によって直接的に需要が増加するというだけでなく、それに付随する経済効果が大きいからである。例えば、鉄道や道路の整備によって土地の供給が増え、住宅建設が進む可能性が出てくる。社会保障が拡大されて人々に老後の不安がなくなれば、増加する所得を使って豊かな消費生活が楽しめるようになる。また公害防止、住宅、交通、教育、医療などに対する新技術の応用が盛んになれば、知識集約型産業の次の発展を促すことになる。このようにして、成長活用型の経済運営は「福祉が成長を生み、成長が福祉を約束する」と云う好循環をつくることができる。(72P)

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