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2015年7月26日 (日)

【大正天皇実録考その5】

 ここで大正天皇の歌人能力に言及しておく。歌そのものについては「大正天皇のお歌考」で考察する。結論から申せば、大正天皇の歌人能力は格段に高い。そういう訳で、大正天皇の御歌を総合的に研究してみたいと思う。浅学菲才ではあるが次のジャンル別に仕分けしてそれぞれの名句を味わいたい。「新年の年賀歌」、「時局&政情歌」、「国見&国憂歌」、「軍事&戦争歌」、「情景&叙情歌」、「自然観察歌」、「人生歌」、「家庭団欒&子供思い歌」、「恋歌」。なお且つ、節子妃(さだこ妃、後の貞明皇后)の歌人能力もこれまた格段に高いことに注目し、両者の掛け合い歌をも紐解いてみたい。いつのことになるかは分からないけれども。

 不思議なことに、大正天皇はそういう歌人能力を示しておりながら、大正天皇が語られること、その御歌が語られることが明治天皇、昭和天皇に比して格段に少ない。これは何によるのだろうか。ここではこの問題に触れない。とはいえ大正天皇の御歌に関する書籍がぼちぼちとは出ている。

  確認できるのは、1973年初版の小田村寅二郎、小柳陽太郎両氏の共編になる「歴代天皇の御歌(みうた)初代から今上陛下まで二千首」(日本教文社)である。明治天皇、昭和天皇の御歌集は単独で出版されているが大正天皇の御歌は目に触れる機会が少なかった。その意味で大正天皇の御歌公開の意義が深い。二千首との絡みが分からないが「この中に収められた総数465首の内、大正天皇の御製118首が謹選されている」と解説されている。

 大正天皇だけの御歌集は2002年初版の歌人・岡野弘彦著「おほみやびうた-大正天皇御集」(邑心文庫)が発行されてようやく日の目を見ることになった。456首が確認されている。岡野氏は、「おほみやびうた-大正天皇御集」の解説で次のように評している。  

 概要「歌の出来は相当のレベルに達しており、特に、清涼さ、透徹した描写においては明治天皇や昭和天皇よりも優れていた」。

 「おほみやびうた-大正天皇御集」の帯文は次のように記している。  

 「世上、大正天皇をめぐって根のない噂話が流布した時期がある。しかし何よりも、こうした歌からうかがわれる天皇には、こまやかで、鋭い物の見通しと、それを短歌の表現にさわやかに凝縮してしらべ豊かに歌う、すぐれた才能を持っていられたことがわかる」。

  推薦文は次の通りである。  

 「悲劇の帝王・大正天皇の無垢で高貴な気稟溢るる御製歌集。明治二十九年から大正十年までの歌を収録」。

 インターネット・サイト「天皇と短歌(二)大正天皇の御製」、2002.10.27日付毎日新聞書評欄「近代の帝はなぜ恋歌を詠まない?」、「大正天皇の大御歌を参照すれば、丸谷才一氏が次のように評しているとのことである。  

 「大正天皇は御水尾院以来最高の帝王歌人である」。「とにかく傑出した力量の持主で、もしもこの才能を自在に発揮させたならば、吉井勇、斎藤茂吉、北原白秋などと並ぶ、あるいは彼らを凌ぐ、大歌人となったに相違ない」。「ひょっとすると、大正という十数年間の憂愁と古典主義との結びつきを最もよく代表する文学者はこの帝だったという想念を抱かせるかも知れない」。

 五木寛之氏も大正天皇の御歌を絶賛し、「彼こそ歴代天皇の中で最高の歌人」と評価しているとのことである。 

 大正天皇は和歌のみならず漢詩をも数多く詠んでおり、こちらも評価が高い。三島中洲の指導を受けて創作し始めたのであろうが、漢詩数は実に1367首に上る。質量とも歴代天皇のなかでも飛びぬけている。これを確認するのに、2位が嵯峨天皇と後光明天皇の98首。ついで後水尾36、霊元25、一条23、村上天皇18、淳和16。あと22人の天皇が6首以下である。

 この能力を聞いても、まだ大正天皇を粗脳呼ばわりする者ありしか。

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